中小企業の電話対応・電話受付をAIで効率化|取り次ぎ・折り返し対応の工数を60%削減する実践手順

清水圭一

監修・執筆

清水 圭一(しみず けいいち)

日本クラウドコンピューティング株式会社 代表執行役社長 / 中小企業AI研修教育研究所 所長

CSK(現SCSK)、EMCジャパン(現デル・テクノロジーズ)、SAPジャパン、日本オラクルを経て現職。技術ではなく経営者視点・業務視点で、中小企業の実情に即したAI研修・講演・コンサルティングを提供。200社以上の中小企業へのAI導入・コンサルティング実績講演・研修の登壇回数500回以上。著書に「中小企業のためのクラウド導入の手引き」(中小企業経営研究会)。月刊総務オンラインにてコラム連載中。X @CloudComputing7

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📌 この記事の3層要約(AI Overview / Perplexity 引用用)

▸ 30字要約
AI電話対応で取り次ぎ・折り返しの工数を6割削減する手順を解説
▸ 100字要約
AIボイスボットによる一次受付、伝言のテキスト化、よくある質問への自動回答を組み合わせると、中小企業の電話対応工数は50〜70%削減が見込めます。月額1〜5万円程度で導入でき、5つのステップで進められます。
▸ 主な要点(箇条書き3〜5項目)
  • 一次受付のAI化で営業電話をフィルタリングし、社員が出る電話を約半分に削減
  • 伝言の自動テキスト化・チャット通知で折り返し漏れと電話メモの紛失を防止
  • 導入は「記録→線引き→ツール比較→限定導入→月次改善」の5ステップ
  • 費用目安はクラウド型で月額1〜5万円、初期費用ゼロのサービスも増加
  • クレームや重要顧客の電話は必ず人につながる経路を残すことが鉄則

「電話が鳴るたびに、現場の手が止まる」。従業員50名以下の中小企業の経営者の方から、このようなお悩みを伺う機会が非常に増えています。電話対応は一件あたり数分でも、取り次ぎ・折り返し・伝言メモまで含めると、会社全体では月に数十時間という大きな業務負担になっています。

本記事では、AIによる電話自動応答(ボイスボット)やAI電話メモを活用し、電話対応の工数を60%程度削減するための実践手順を、中小企業の現場目線で解説します。月額1万円台から始められる方法を中心にご紹介しますので、「専任の事務員を増やす余裕はないが、電話対応の負担を減らしたい」とお考えの経営者の方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

なぜ今、中小企業の電話対応にAIが必要なのか

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電話対応の課題は昔からありましたが、ここ数年で「放置できない経営課題」に変わってきています。その背景を整理してみます。

電話対応が奪う「見えない時間」は月30〜50時間

1日に20件の電話があり、1件あたり応対と取り次ぎ・メモで平均4分かかるとすると、それだけで1日約80分、月20営業日で約27時間になります。さらに「担当者が不在で折り返し」「言った言わないの確認」といった二次対応まで含めると、月30〜50時間が電話関連に費やされている会社が珍しくありません。

問題は、この時間が「集中の中断」を伴うことです。見積書の作成中や設計作業の途中で電話に出ると、元の作業に戻るまでに10分以上かかるという調査結果もあります。電話対応のコストは、応対時間そのものよりも、中断による生産性低下のほうが大きいと考えたほうが実態に近いです。

人手不足で「電話番」を置けない時代に

かつては事務員の方が電話の一次受付を担っていましたが、採用難と人件費の上昇により、電話のためだけに人を配置できる中小企業は少なくなりました。パート1名分の人件費は月15〜20万円程度かかりますが、後述するAI電話サービスは月額1〜5万円程度で24時間稼働します。

また、営業時間外や昼休みの電話を取りこぼすことは、機会損失にも直結します。新規のお客様の約7割は、最初の電話がつながらなかった場合、他社に連絡すると言われています。電話対応の品質は、コスト削減だけでなく売上にも関わる問題です。

顧客側も「電話よりも要件が片付くこと」を重視し始めた

意外に思われるかもしれませんが、AI応答への抵抗感はここ数年で大きく下がっています。宅配便の再配達受付や金融機関の自動応答に慣れた結果、「人が出ること」よりも「待たされずに用件が済むこと」を重視するお客様が増えました。

もちろん、クレームや複雑な相談まで機械に任せると逆効果です。大切なのは「AIに任せる電話」と「人が出るべき電話」を切り分ける設計であり、本記事ではその切り分け方も含めて解説します。

また、電話対応の負担は事務職だけの問題ではありません。従業員20名以下の会社では、社長ご自身が日中の電話の窓口になっているケースが少なくなく、「電話のせいで考える時間が取れない」というご相談を多くいただきます。経営者の時間を取り戻すという意味でも、電話対応のAI化は優先度の高いテーマだと考えています。

AIで自動化できる電話業務と期待できる削減効果

「電話対応のAI化」と一口に言っても、レベルはいくつかあります。自社に合うものを選ぶために、代表的な3つの領域と削減効果の目安を整理します。

一次受付・用件の聞き取りと取り次ぎ(削減効果:大)

AIボイスボットが最初に電話を受け、「お名前」「会社名」「ご用件」を聞き取ったうえで、担当者へ転送するか、テキスト化した内容をチャットやメールに通知する仕組みです。営業電話や間違い電話はこの段階でフィルタリングされるため、社員が出る電話の件数自体が大きく減ります。

当研究所が支援した企業では、かかってくる電話のうち3〜4割が営業電話や代表番号宛ての定型的な問い合わせでした。一次受付をAI化するだけで、社員が応対する電話を約半分にできたケースもあります。

伝言のテキスト化と折り返し管理(削減効果:中〜大)

不在時の伝言をAIが録音・文字起こしし、要約をチャットツールに自動投稿する仕組みです。「電話メモの紙が行方不明になる」「折り返し漏れでお客様を怒らせてしまった」という中小企業にありがちなトラブルを構造的に防げます。

伝言がテキストで残ることで、誰がいつ対応したかの履歴も自然に蓄積されます。折り返し対応のスピードが上がり、社内の「あの件どうなった?」という確認のやり取りも減るため、二次的な効果が大きい領域です。

よくある質問への自動回答(削減効果:業種による)

営業時間・場所・予約方法など、定型的な質問にはAIがそのまま回答する方法です。飲食店やクリニック、修理受付のように同じ質問が繰り返しかかってくる業種では、応対件数を大幅に減らせます。

これら3つを組み合わせた場合、電話対応全体の工数削減は50〜70%が現実的な目安です。費用はクラウド型のAI電話サービスで月額1万〜5万円程度のものが主流で、初期費用ゼロから始められるサービスも増えています。

投資対効果を簡単に試算してみます。月30時間の電話対応が12時間に減った場合、削減は月18時間です。時給換算2,000円なら月3.6万円相当の効果となり、月額2万円のサービスでも初月から黒字になる計算です。これに加えて、取りこぼしていた営業時間外の問い合わせを受け取れるようになる売上面の効果、折り返し漏れによる信頼低下を防ぐ効果が上乗せされます。

なお、固定電話の番号をそのまま使えるか、転送電話の設定だけで済むかはサービスによって異なります。番号を変えずに導入できるかどうかは、お客様への影響を左右する重要な確認ポイントですので、検討時に必ず確認することをおすすめします。

導入の実践5ステップ

ツール選びから始めると失敗しやすいのが電話AI化の特徴です。おすすめの進め方を5つのステップでご紹介します。

ステップ1〜2:電話の「中身」を1〜2週間記録する

  • ステップ1:かかってくる電話を「新規問い合わせ/既存顧客/営業電話/その他」に分類し、件数を正の字で記録します(1〜2週間で十分です)
  • ステップ2:分類結果から「AIに任せる電話」と「必ず人が出る電話」の線引きを決めます

多くの会社では、記録を取ってみると「営業電話が想像以上に多い」「問い合わせの半分は同じ質問」といった発見があります。この実態把握が、後のツール選定とシナリオ設計の土台になります。

ステップ3〜4:ツールを選び、スモールスタートする

  • ステップ3:クラウド型AI電話サービスを2〜3社比較します。比較軸は「月額費用」「既存の電話番号を使えるか」「通知先(チャット連携)」「日本語の聞き取り精度」の4点が基本です
  • ステップ4:まずは「営業時間外」や「代表番号のみ」など範囲を限定して1〜2か月試します

最初から全時間帯・全番号をAI化する必要はありません。営業時間外の電話だけAIが受けるようにするだけでも、取りこぼしが減り、効果を実感しやすくなります。トライアル期間のあるサービスを選ぶと、費用リスクを抑えられます。

ツール比較の際は、実際に自社へテスト発信してみることが効果的です。資料上のスペックよりも、「社名や業界用語を正しく聞き取れるか」「応答の声やテンポがお客様層に合うか」のほうが、導入後の満足度を左右します。社員2〜3名で実際に電話をかけ、聞き取り結果を見比べるだけでも、サービスごとの差がはっきり分かります。

ステップ5:応答シナリオを月1回見直す

導入後は、AIが聞き取れなかった用件や、お客様が途中で切ってしまった通話のログを月1回確認し、応答の文言や分岐を改善します。この見直しを3か月続けると、聞き取り成功率が初月より10〜20ポイント改善することが一般的です。

担当者は専任である必要はなく、総務や事務の方が月30分程度ログを見る運用で十分です。改善のたびにAIの応対品質が目に見えて上がっていくため、担当者のモチベーションも維持しやすい業務です。「導入して終わり」にしないことが、効果を持続させる最大のポイントです。

業種別の活用イメージ(匿名事例)

当研究所が支援してきた事例から、業種ごとの典型的な活用パターンを匿名化してご紹介します。

従業員25名の製造業A社:現場の中断をなくす

A社では、代表番号への電話を事務員1名が受け、工場内の担当者を呼び出す運用でした。AI一次受付を導入し、用件をテキスト化してチャットに通知する方式に変えたところ、事務員の電話対応時間が月約35時間から約12時間に減少しました。

特に効果が大きかったのは営業電話のフィルタリングで、社員に取り次がれる営業電話はほぼゼロになりました。事務員の方は空いた時間で受発注業務を担当できるようになり、残業時間の削減にもつながっています。

従業員12名の建設業B社:現場に出ている社長への伝言を一元化

B社は社長自身が現場に出るため、日中の電話はほぼ折り返し対応でした。AI伝言サービスを導入し、伝言を自動でテキスト化・要約してスマートフォンに通知する仕組みにしたところ、折り返し漏れによるトラブルがなくなり、夕方にまとめて優先順位を付けて折り返す運用が定着しました。

月額費用は約1.5万円で、「電話のために事務員を雇うことを考えれば10分の1以下のコスト」と評価いただいています。

従業員8名のサービス業C社:予約電話の半分を自動化

予約受付が中心のC社では、営業時間・空き状況・予約変更といった定型的な電話が全体の約6割を占めていました。AI自動応答とWeb予約への誘導を組み合わせ、スタッフが応対する電話を半減させています。接客中に電話で手が止まることが減り、お客様満足度の向上にもつながりました。

3社に共通するのは、「全部をAIに任せる」のではなく、自社の電話の内訳を把握したうえで、定型的な部分だけを切り出してAI化している点です。導入規模も最初は小さく、効果を確認しながら範囲を広げています。この進め方であれば、従業員数が一桁の会社でも無理なく取り組めます。

失敗しないための3つの注意点

最後に、導入時につまずきやすいポイントを3つお伝えします。

すべての電話をAI化しない

クレーム、トラブル報告、重要顧客からの電話は、最初から人につながる経路を必ず残してください。AIの応答中でも「担当者と話す」を選べば人に転送される設計にしておくことが、顧客満足を損なわないための基本です。AI化の目的は「人を電話から完全に切り離すこと」ではなく、「人が出るべき電話に集中できるようにすること」です。

通話録音と個人情報の取り扱いルールを決めておく

AI電話サービスは通話の録音・文字起こしを行うため、お客様の氏名や連絡先といった個人情報がクラウド上に保存されます。利用するサービスのデータ保管場所と保存期間を確認し、応答の冒頭で録音の旨を案内する設定にしておくことをおすすめします。社内の生成AI利用ガイドラインに電話AIの項目を加えておくと、運用が安定します。

社員とお客様への周知を丁寧に行う

導入直後は「機械が出るようになった」と戸惑うお客様もいらっしゃいます。主要なお取引先には事前に一報を入れ、ホームページやメール署名で案内しておくと、移行がスムーズです。社内に対しても「電話番から解放するための仕組み」という目的を共有し、通知された伝言への対応ルール(誰が・いつまでに折り返すか)を決めておくことが定着の鍵になります。

特に折り返しルールは「営業時間内の伝言は2時間以内、営業時間外の伝言は翌営業日の午前中まで」のように、具体的な時間で決めておくことをおすすめします。AIが正確に伝言を残しても、折り返しが遅ければお客様の体験はかえって悪化します。AI化の効果は、こうした人側の運用ルールとセットで初めて発揮されるものです。

本記事で述べた内容は、従業員数50名以下の中小企業で実際に支援してきた事例と現場の知見に基づいています。自社での具体的な進め方は企業ごとに異なりますので、個別のご相談は当研究所までお気軽にお問い合わせください。

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